去年の同じ月の販売数をもとに発注したら、倉庫に在庫の山ができた。よく見ると、去年の数字には大型セールと、SNSでたまたま話題になった週が含まれていた。需要予測で、いちばん多い失敗です。
在庫が多すぎると保管と値下げの負担が増え、少なすぎると販売機会を逃します。AIによる需要予測は注目されていますが、過去の数字だけで未来を正確に当てられるわけではありません。新商品、急な流行、天候、広告、価格変更、欠品。販売数に影響する要因を一緒に考えてこそ、予測は使える数字になります。
この記事では、AIを「判断の代わり」ではなく、データの整理と複数の見通しづくりの補助として使う方法を紹介します。
【この記事でわかること】
- 予測の土台になる販売履歴のそろえ方と、欠品を記録する理由
- 一つの数字ではなく「幅」で考える3つのシナリオ
- 予測が難しい商品の扱いと、実績との差の活かし方
販売履歴を同じ単位でそろえる
商品別の日次または週次の販売数、在庫数、入荷日、価格、返品数を整理します。商品名やSKUが途中で変わっている場合は、対応関係を確認してください。
見落としやすいのが、欠品の期間です。「売れなかった」のか「在庫がなくて売れなかった」のかを区別しないと、人気商品ほど過小に予測されます。欠品していた日を記録しておくだけで、予測の精度は大きく変わります。アクセスデータと同じく、集計期間や定義をそろえることが前提です。整理の仕方は『AIでECのアクセスデータを分かりやすく整理する方法』と共通しています。
季節と販促の「出来事」を加える
セール、広告、SNS投稿、イベント、気温、連休など、販売が増減した理由を記録します。通常の販売と大型キャンペーンを混ぜて平均を出すと、冒頭のように、必要以上に多い予測になります。
記録は簡単で構いません。「3/15〜3/21 春セール20%オフ」「6/3 インフルエンサー投稿で急増」「8月 欠品10日間」。AIには、数字だけでなく、この出来事の一覧も一緒に渡してください。「セールの週を除いた通常時の週平均」を出させるだけで、発注の根拠はずっと堅くなります。
一つの数字ではなく「幅」で考える
標準、好調、慎重の3つのシナリオを作ります。数字は説明のための仮の例ですが、通常時の週平均が50個なら、標準50、好調70、慎重35のように幅を置き、それぞれで必要な在庫と追加発注のタイミングを確認します。
AIへの依頼はこうです。
「この販売履歴と出来事の一覧から、セール期間を除いた通常時の週平均と、標準・好調・慎重の3シナリオの週販売数を出してください。根拠も添えてください」
発注から入荷までの期間(リードタイム)が長い商品ほど、慎重シナリオに寄せた安全在庫が必要です。逆に、1週間で追加できる商品なら、標準シナリオで発注し、売れ行きを見て足せば十分です。
予測が難しい商品を分ける
販売実績の少ない新商品、流行の影響が大きい商品、季節限定品は、過去データだけでは予測できません。似た商品の実績、予約数、問い合わせの数を参考にしつつ、少量から始めて売れ行きで追加する方法を検討してください。
AIが示す細かな数字(「来月は137個」のような)を、確実な結果として扱わないこと。数字の細かさと、予測の確かさは別物です。
予測と実績の差を記録する
予測した販売数と実績を定期的に比べ、差が生まれた理由を確認します。予測の方法が悪かったのか、広告や欠品など想定外の出来事があったのかを分けてください。
差の記録を次の予測に反映すると、「うちの商品は、セール後の2週間は反動で落ちる」といった自社ならではの判断基準がたまっていきます。記録の考え方は『AI導入でどれくらい時間を削減できる?測定方法を解説』と同じです。
よくある質問
販売データが数か月分しかない。予測はできる?
厳密な予測は難しいですが、「通常時の週平均」と「出来事の記録」から始める価値はあります。データがたまるほど精度は上がるので、記録の習慣を先に作ってください。
需要予測の専用ツールを入れるべき?
商品数が多く、発注の判断が週に何度も発生するなら検討の価値があります。そうでなければ、まず表計算とAIで「幅」を出す運用で十分です。在庫のような判断の重い業務は、文章作成などでAIの使い方が社内に定着してから広げるのが安全です。『EC AIを30日で定着させる導入ロードマップ』で、広げる順番を解説しています。
まとめ
AIで在庫と需要予測を考えるときは、販売履歴に欠品期間と出来事の記録を加え、通常時の数字を土台に、標準・好調・慎重の幅で見通しを作ります。予測を正解とせず、リードタイムと現場の情報を合わせて判断し、実績との差を記録して次に活かす。これが、在庫の山も欠品も減らす、現実的な使い方です。
【今日からできる3ステップ】
- 主力商品3つの販売履歴に、欠品期間と出来事(セール・広告・投稿)を書き足す
- AIに「セール期間を除いた通常時の週平均」と3シナリオを出させる
- 次の発注を標準シナリオで行い、翌月に予測と実績の差を記録する
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