お客様から「この棚の奥行きは何cmですか」と聞かれて、仕入先からのメールを探し、見つからずに商品を測りに行く。そのあいだに、AIに頼んだ商品説明の下書きには、確認していない「奥行き30cm」がもっともらしく書かれている。商品情報が散らばっているショップで、本当に起きる光景です。
AIに「この商品の説明を書いて」と頼んでも、元になる情報が足りなければ、一般的な文章になるか、存在しない特徴を補ってしまいます。AIを業務で安定して使うには、ツールの使い方より先に、商品情報を整えることが重要です。情報が表、メール、紙、担当者の記憶に分散していると、登録や確認にも毎回時間がかかります。
この記事では、AIで活用しやすい商品マスターの作り方を、最小限の項目から紹介します。
【この記事でわかること】
- 商品マスターに入れる項目と、事実・販促情報の分け方
- 表記ゆれ、単位、「未確認」の扱い
- 更新担当と反映先を決め、古い情報を残さない仕組み
事実情報と販促情報を分ける
型番、素材、サイズ、内容量、原産国、注意事項などの「事実」と、商品の魅力、利用場面、対象のお客様などの「販促情報」を分けます。
- 事実情報:正式資料(メーカー資料、商品ラベル、実測)から入力する。AIには触らせない
- 販促情報:AIで候補を作り、担当者が選んで入力する
この区別がマスターの列に表れていれば、AIに渡してよい情報と、AIが書き換えてはいけない情報が、誰にでも分かります。商品説明に必要な5つの情報については『売れる商品説明文をAIで作るために必要な5つの情報』で解説しています。
基本項目を全商品でそろえる
カテゴリーによって項目は違いますが、次の列は全商品共通で管理できます。
- 管理番号、商品名、カテゴリー
- 価格(税込・税別の別を明記)
- 仕様(素材、サイズ、重さ、内容量、色)
- 注意事項、お手入れ方法
- 画像ファイル名
- 公開状態(下書き/公開/終売)
- 更新日、更新者、情報の出どころ
必須項目と任意項目を決め、空欄の意味が分かるようにしてください。「奥行き」の欄が空なら、それは「測っていない(未確認)」なのか「この商品には該当しない(情報なし)」なのか。この2つを区別するだけで、AIが空欄を勝手に埋める事故が減ります。空欄には「未確認」「該当なし」と書く、と決めておけば十分です。
なお、繊維製品の組成や取扱い表示(家庭用品品質表示法)、食品の原材料やアレルギー表示(食品表示法)のように、法令で定められた表示項目は、マスターの「事実情報」の列に正式資料から転記しておきます。
表記ゆれと単位を統一する
全角と半角、色名、素材名、cmとmm、税込と税別。同じ意味の言葉が商品ごとに違うと、AIの文章もばらつき、検索でも損をします。
- 色名:「ネイビー」「紺」「濃紺」 → マスターでは「ネイビー」に統一
- 単位:「30cm」「300mm」「30センチ」 → 「30cm」に統一
- 数字:全角「30」と半角「30」 → 半角に統一
標準表記を一枚にまとめ、AIにも「この表記に従う」と指示します。表記ゆれの統一は地味ですが、複数モールに展開するときに効いてきます。『楽天・Amazon・自社ECの商品情報をAIで作り分ける方法』の作り分けも、この統一が前提です。
情報の出どころを残す
メーカー資料、商品ラベル、仕入先のメール、社内での実測。情報の出どころと確認日を列に残しておくと、誤りが見つかったときに「どの資料に戻ればよいか」がすぐ分かります。
出どころの列があると、もう一つ良いことがあります。「仕入先のメール(2年前)」と書かれた情報は、更新が必要なことが一目で分かります。
未公開の商品情報や取引先の秘密をAIに入力してよいかは、利用するサービスと社内ルールで決めておきます。ルールの作り方は『EC企業が作っておきたいAI利用の社内ルール』をご覧ください。
更新担当と反映先を決める
仕様や価格が変わったとき、誰がマスターを更新し、どのECサイト、モール、チラシ、カタログに反映するかを決めます。古いファイルのコピーを増やさず、最新版の置き場所を一つにしてください。
「最新版はどれ?」と聞く場面がある時点で、マスターは機能していません。更新履歴があれば、AIで文章を作り直すべき商品も、履歴から見つけられます。
最小限から始める
既存の商品が数百ある場合、全部を一度に整えようとすると止まります。おすすめの順番はこうです。
- 売れ筋の上位20商品だけ、必須項目を埋める
- その20商品でAIの商品説明を試し、足りなかった項目を列に足す
- 新商品は、登録時に必ずマスターから入力する運用にする
一人や少人数のショップでも、この順番なら無理なく始められます。進め方は『一人・少人数で運営するECにAIを導入する方法』、業種ごとの必須項目は『アパレルECでAIを活用できる7つの業務』と『食品ECでAIを活用するときの方法と注意点』で扱っています。
よくある質問
商品が1,000点以上ある。全部整理するのは無理では?
全部を整理する必要はありません。売れ筋の上位20〜50商品と、これから登録する新商品から始めてください。売上の大半は、たいてい上位の商品が作っています。
専用のツール(PIM)は必要?
商品数が数百までなら、表計算で十分です。複数モールへの自動連携や、担当者が複数で同時に更新する必要が出てきた段階で、専用ツールを検討すれば間に合います。マスターの「列」が決まっていれば、あとから移すのも簡単です。
まとめ
AI活用の土台は、正しく整理された商品情報です。事実と販促情報を分け、基本項目をそろえ、表記と単位を統一し、情報の出どころと更新担当を決める。これだけで、AIの商品説明は安定し、SNSやモールへの展開も速くなります。全部を一度に整えようとせず、売れ筋20商品から始めてください。
【今日からできる3ステップ】
- 売れ筋の上位20商品を選び、共通の列(管理番号〜更新日)で表を作る
- 空欄に「未確認」か「該当なし」を書き分け、「未確認」を今週中に埋める
- 色名・単位・数字の標準表記を1枚にまとめ、AIへの指示文に加える
ママダカラEC AIでは、商品マスターの設計からAIテンプレート、複数媒体への展開まで支援します。
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